建物をつくるには、使用箇所に応じた材木(用材という)を加工します。用材の加工には長さ・角度等をはかることが必要で、加工済みの部材を組み立てるには部材の水平・垂直をみなくてはなりません。さらに計測した結果を線引きしたり、記号を書き込んだりする作業もあります(この仕事を墨付けといいます)。これら一連の作業に用いる道具を総称して墨掛道具といいます。


▲ 墨掛道具群像(中国の道具含む)

墨壺・墨さし・曲尺は、現場での設計・製図の道具にもなり、大工の高度な技術を象徴する大切な道具であったため、儀式の際に飾り付ける道具として欠かすことができませんでした。その伝世品は儀式用道具として古い社寺や伝統のある会社などにに残されていることがあります。なかでも日光東照宮に伝わる幕府大棟梁・甲良豊後守が奉納した儀式道具は建物とあわせて国宝に指定されていることで知られています。


▲ 江戸時代の儀式道具

墨掛道具には、墨壺・墨さし・曲尺をはじめとして巻がね、留型定規、水平器、下げ振り、おさ定規、口引など様々な種類がありますが、これらは大きく「墨をつける道具」「水平・垂直をはかる道具」「角度をはかる道具」「長さをはかる道具」「曲線をうつす道具」にわけることができます。以下、写真を交えて、その特徴を個別に解説します。

 
  • ※ 本ページの内容は『竹中大工道具館収蔵品目録第5号-墨掛定規類・罫引・錐篇-』の解説を抜粋したものです。
  • ※ 品名は、主に関西で用いられている道具名称を参考にして当館で用いられている統一名称によっています。地域や研究者によって道具の名称はことなることがあります

墨掛道具

罫引

雑道具