鑿(のみ)は材に穴をあけたり、細かい部分を削り取ったりする時に使うもので、わが国では鋸・鉋とならんで加工にはなくてはならない道具です。鉄製の刃物の部分と、手につかむための木材の柄の部分からなっていて、刃物の部分は穴があけやすいように形を絞り込んで細長い首をつくります。刃先は鉋と同じように木を削るための鋼に地金を鍛接(たんせつ)するつくりになっていて、柔らかい地金で甲表や首、柄に差し込むコミ部分をかたちづくります。

鑿には様々な種類がありますが、用途に応じて大きく叩鑿(たたきのみ)と仕上鑿(しあげのみ)にわけることができます。叩鑿は玄能や鎚を使ってホゾ穴を掘ったり、脇を削り取ったりするときに用いるもので、頑丈につくってあります。また叩いて使うため、柄の頭部分に冠(かつら)と呼ばれる鉄製の環をつけて用います。仕上鑿は叩鑿で掘った部分の仕上げや鉋がかけられない細かい箇所の仕上げに用いるもので、腕力だけで削るため柄が長く、刃先も鋭利にできています。

鑿だけは大が小を兼ねられないため、刃幅を各種そろえる必要があります。叩鑿の一つである大入鑿(おいれのみ)だけでも大小10本をセットにして使い分けるほど種類の多い道具です。また鉋と同じく切れ味がやかましく吟味される道具で、そのために多くの名品・名工が生まれました。

▲鑿の各部の名称


▲ 叩鑿の使い方


▲ 突鑿の使い方

 
  • ※ 本ページの内容は『竹中大工道具館収蔵品目録第2号-鑿篇-』の解説を抜粋したものです。
  • ※ 品名は、主に関西で用いられている道具名称を参考にして当館で用いられている統一名称によっています。地域や研究者によって道具の名称はことなることがあります。
  • ※各資料写真の縮尺は一致していません。

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