鋸は木を切断するときに用いる道具であることはよく知られています。大工道具の中でも鑿(ノミ)・鉋(カンナ)とあわせて最もよく使われる道具です。

鋸は鋼製の鋸身と木製の柄からできています。鋸身で歯のついている部分を「鋸歯(鋸目)」と呼び、ついていない側は「背」と呼びます。また柄に近い部分を「元身(本身)」、先の方を「末身」と呼びます。一般的に鋸身は鋸歯や背の部分のよりも中央の腰の部分が厚く、また末身は薄く幅広くつくり、元身に近づくにしたがって厚さを増し、幅狭くします。このことによって鋸身全体に均一の強さを与えるようになっています。 またわが国の鋸は一般に引くときに切れるつくりになっています。世界の大工道具を見渡すと、ほとんどの国で鋸は押し使いですので、わが国の鋸は非常に珍しい使い方をしていることになります。

鋸はまた種類が多い道具としても知られています。まず木の繊維方向に挽く「縦挽鋸」と、繊維の方向と直角に挽く「横挽鋸」に大きくわかれています(下記解説参照)。 職種が分化した江戸時代以降は、用途にあわせて各種の専用鋸が生まれました。縦挽き用には、ガガリや鴨居挽き鋸などがあり、横挽き用には穴挽き鋸(鼻丸鋸)、胴付き鋸、挽廻し鋸、突廻し鋸などがあります。また良く目にする鋸の両側に縦挽き、横挽きの両方の目をつけた鋸は両刃鋸と呼び、明治30年頃から使われ始めたものです。

鋸は鋼板を切り抜き、熱処理を加えてから鎚で打ち鍛えてつくりあげます。鋼板の容易に手に入るようになる前は、玉鋼(たまはがね)から打ち鍛えて作っていましたが、均一な鋼の鋸身にするのに苦労したと言われています。



▲ 鋸の各部の名称

 
  • ※ 本ページの内容は『竹中大工道具館収蔵品目録第1号-鋸篇-』の解説を抜粋したものです。
  • ※ 品名は、主に関西で用いられている道具名称を参考にして当館で用いられている統一名称によっています。地域や研究者によって道具の名称はことなることがあります。

墨掛道具

罫引

雑道具